本文へジャンプ | FF8

祭日幻想

4

スコールはリノアとともに、宮殿の門をくぐった。今回の依頼はキュリアクス祭のアトラクションの一つである模範演技と最終日の勝者へのメダル授与。その合間に王宮で開かれるパーティへの出席も義務づけられている。学園長から命を受けた時、どうして自分がと思わなくもなかったのだが、先方の依頼内容は「観客を満足させてくれたらそれでいい。人数も人選も任せます」だったらしく、セルフィ曰く、
「よーするに、依頼がいい加減すぎるわけや。えい、面倒だ、一番ド派手な技ぶちます、ア〜ンド、観客受けする奴送り込めちゅうわけやね。効率からいってもそれが一番や。SeeDリーダー直々なら一名きりでも文句いわれへん。確実に見世物になるで」
不愉快に思いつつも結局引き受けざるを得なかったスコールだった。
「ね、スコール、私、おかしくないかな?」
横のリノアがしきりに身なりを気にする。白色のドレスに髪もアップして、いつにもまして可憐な美しさだ。
「…おかしくない」
綺麗だ、とは心の中で呟くだけで言葉として出ることはない。
案内され、パーティ会場の広間に足を踏み入れると、華やかに装い、談笑している老若男女で溢れかえっていた。玉座を見れば国王、王妃は不在だった。半ばで登場するのが常だった。側にいた男女の輪がスコール達を見つけ、声をかけてくる。
「バラム・ガーデンのスコール・レオンハート司令官ですわね。昼間、拝見させていただきましたわ」
「評判通りだね。まったく見事だ。私がガーデンに依頼する時は、一つよろしく頼むよ」
「光栄です」
スコールは短く答え、しばらく彼らとの談笑が続く。といってもスコールはほとんど参加せず、もっぱら和やかな雰囲気で談笑し続けることが出来たのはリノアの功績だったのだが。会話に参加していた中年婦人の一人が何かに気づいたように遠い場所へ視線を移す。
「あら?ビリアーズ伯爵夫人だわ。お珍しいこと」
スコールとリノアもつられて、視線の先を追う。そこには金髪を結いあげ、全身を高価な宝石と布地に包んだ40代前半ぐらいの女性がいた。背が高く、体型はまったくといっていいほど崩れておらず体に無駄なところがない。若い頃も、そして今も美人で在り続けられる女性の、典型のような婦人だ。彼女は今、別の男女の輪に囲まれ楽しく談笑している。
「まぁ、本当ですわ。ご主人がお亡くなりになってからほとんど公式の場へはおいでにならなかったのに。お聞きになりまして?夫人の噂・・・」

次のページへ

前のページへ戻る
ページの先頭へ戻る


文責:楠 尚巳