カーテンで閉ざされた薄暗い空間に屋敷の女主人はいた。
窓の向こうは眩しいほどの光が支配している世界だというのに頑なに拒絶して。
ただ、踊りつづける。本能の赴くまま…
西に浮かぶ島国、カスター王国。
この国は音楽や演劇、スポーツと、文化の面で非常に発達している王国だ。幾人ものすぐれた芸術家を生む国としても知られ、毎年、大規模な音楽祭、演劇祭などが開催されるこの時期は、世界中から見物客が集まってくる。キュリアクス祭もカスター王国を代表する祭りの一つだった。
中世、この地に栄えたキュリアクス王国で最初に開催されて以来、延々と受け継がれてきたこの祭りは時に長い間中断されはしたものの、伝統ある祭りの一つとして現代にまで残っている。開催当初は戦士とモンスター、あるいは戦士と戦士をどちらかが死ぬまで闘わせるという残酷な祭りだったらしいが、さすがに近代ではそのようなことはなく、スポーツ色の濃い剣闘士試合が行われるだけだ。最近では「何でもいいから挑戦してみよう、戦ってみよう」と広範囲に捕られ、老若男女問わず参加できるようにと祭りの期間に国のあちこちでカード大会やら料理大会やら開催されるようになった。それでも一番の注目は伝統ある国王主催の剣闘士試合であることにかわりない。
そして今……
キュリアクス祭開会式を迎え、観客がもっとも楽しみにしていたアトラクションが行われようとしていた。闘技場を埋め尽くす見物客の視線は一人の青年に集中している。SeeD服を着た、砂色の髪に青い目の端整な青年に。ガンブレードを構えた青年の前に立ちはだかっているのは、赤き竜、ルブルムドラゴン------