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Sファイル

7

「よーし、運び出せ。引きずれ。そーっとだぞ。傷をつけるなよ」
トーマスの声に作業員は機械を使い、巨大な氷の塊、正確には中に眠るウェポンを穴の外から、出そうとする。
「あっ!これは、社長!わざわざお越しで…」
トーマスが、ピメンテル社長に気づいた。年齢は40歳半ば。その手腕は200年近い歴史を持つピメンテルの中でも五指に入るといわれる。ただ、手段を選ばないことでも有名であった。
「すばらしい。オーロラを体現したかのような美しさだ」
生きたエメラルドの宝石、ウェポンをを賞賛しながら、トーマスに握手を求め、労をねぎらう。
「はい、さようで。私どもも驚いております」
「よくやってくれた。君達には、礼をはずもう。これを公開したら、世界中が注目するぞ。世界でただ1箇所。太古の昔封じられた氷の中に眠るウェポンを目の当たりにすることが出来る所…どこで公開するかだが…」
「ここの地にはしないので?」
「…ここは開発に金がかかる。このウェポンだけでも、この地を上まわる収益を上げられるからな。もっと金のかからないところを探すさ。モンスターパークに移すことも考えている」
その時である、悲鳴があがった。
「なんだ!どうした!!」
トーマスが、悲鳴が聞こえた場所に走っていく。
「監督!あれ、見てください…瞬きしはじめたんです」
エメラルド・ウェポンに目を向け、トーマスは驚愕した。堅く閉じられたままだった両眼が開かれ、瞬きしているのだ。ギョロリ、と巨大な目が動き、人間どもと目があった。
「ど、どうするので、監督!」
「落着け!相手は氷の中だ」
トーマスが言った側から、作業員達は、一目さんに逃げ出して行く。
「こら、逃げるな!運べ!」
誰も耳に入れるものはいない。恐怖にかられた作業員達をとめることなど不可能だった。
「社長!!ひとまず安全なところに避難を。SeeDを呼べ!」
ピメンテル社長は、わずかに顔色をかえた。トーマスは知らなかったのだ。社が雇ったSeeDが偽であるということを。やがて、姿をあらわしたのは一人だけだった。
「マイオ!こっちだ!…あとの二人はどうした?」
「逃げましたよ。話が違う、そう言ってましたよ、社長。まぁ、あいつらはただの雇われ。偽SeeDですから当然ですが」
マイオは、冷笑する。
「偽SeeD?」
トーマスは、驚いたように社長を見る。
「…ふん。お前は逃げなかったらしいな。さすが元SeeDというべきか」
「勘違いしないでください。俺の実力は、SeeD以上です。あの甘ちゃん組織に俺がなじめなかっただけです」
「そこまで、でかい口たたくなら、あのウェポンをどうにかできるんだろうな?」
ピメンテルは、憎々しげにマイオを睨みつける。
「なぜ、私がそんなことをしなければならないのです?あなたとの契約はSeeDのふりをすることだった。ウェポン相手に戦うことは契約のうちではありません。計画通り、SeeDの責任にすればよろしいでしょう?あなたが逃げられたらの話ですが。ほら、もうじき、出てきますよ」
マイオが指差し、ピメンテルとトーマスはぎょっとする。ウェポンが目だけでなく、全身を動かそうとしていたのだ。
「では、私はこれで…」
身を翻し、その場を離れようとしたのだが、出来なかった。彼の前に、立ちふさがった人物がいたのだ。
「ちょ〜っと、それは都合よすぎるんじゃないんですか〜。先輩」

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文責:楠 尚巳