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Sファイル

3

翌日、朝早くから村は騒がしさに包まれた。ウェポン発掘作業の為、機械を載せた大型輸送機や、人員を乗せたヘリコプターがひっきりなしに村とその周辺に到着する。

スコールは、ペンションの1階、一番その光景がよく見える談話室の窓越しに、その光景を眺めやっていた。
「ウォルターさん。ここにおいででしたか。村長が来て欲しいとおっしゃっております」
「わかりました」
ようやく到着したらしい。今回の作業の責任者、そして、彼らが雇ったというSeeDが。
昨日の夜、確認のためにガーデンへメールを入れ「該当なし」の返事をもらっていた。ならば、彼らが雇ったSeeDは、本当のSeeDではないのだ。
スコールは村長宅に着く。そして、昨日と同じ部屋に通された。
「おお、ウォルター殿。来て下されたか」
村長が声をかける。
「こちらは、わしの知り合いでしてな。ウォルター殿というのじゃ。わしらでは、わからないこともあるのでな。彼に来てもろうたのじゃ。ウォルター殿。こちらは、トーマス殿じゃ。今回の作業責任者じゃよ。そして、あちらの三人がSeeDじゃ」
村長に紹介され、スコールは軽く会釈した。SeeDと紹介された三人を注意深く観察する。いずれも知らない人間だ。だが、班長というSeeDが名乗ったとき、記憶にひっかかるものを感じた。
「班長のマイオ・リードです」
「へぇ、SeeDってこんなに若かったのかよ。大丈夫なのか?細い体でよ」
隣にいたビルが、率直な感想をもらす。
「…SeeDは15歳から20歳までです。20歳以上のSeeDは存在しません」
マイオと名乗った青年は表情も変えずに言う。
「へぇ。もっとこう、ベテランが、かっこよく仕事しているのかと思った」
「SeeDってモンスターには詳しいのでしょう。本当に危険はないのでしょうね?」
おそらく今までにも何度もピメンテル社の連中に確認したであろうことを再度、念を押すように確認するのはカーラだ。
何かあったらただじゃおかない―――全身からそんな決意がみなぎっている。
そんなカーラにマイオは動じることなく、うっとうしいと言わんばかりに感情のない声で答えだだけだった。
「…依頼された以上は任務に最善を尽くします。SeeDにとってクライアントは絶対ですから」
スコールはその言葉で、ようやく思い出した。マイオの名前を。
マイオ・リード。キスティスと同じく15歳でSeeDとなった男だ。だが、三年前に放校処分となった。SeeDとして、優秀すぎるほどだったのだが、やり方に問題がありすぎた。彼はSeeDであった頃、ガルバディアに所属しており、スコールとは面識がなかったのだが、以前、アーヴァインから聞いたことがある。
「ほんとに嫌な奴でさ〜。なんと言うか…冷たい奴だったんだよね」
「俺だってそうだ。それが問題か?」
「君とは違うね。君のは、自分の事は自分でする。お前も自分の事は自分でしろ、っていう類のものだろ?だから、そんな態度に惹かれる奴もいるのさ。実際、本当に言うだけのことをやるしね〜。だけど、マイオの奴は違う。自分の為に他人を犠牲に出来る奴だ。それが当然、と思っている奴なのさ」
そう言ってアーヴァインは、ある出来事を話してくれたものだ。
マイオがSeeDになってまもなくの事。ガルバディアの企業から、盗まれたデータを取り戻して欲しい、とSeeD派遣の依頼が来て、マイオと2名のSeeDが派遣された。完璧に果してくれた、と企業から絶賛の通信がガーデンに入ったのは、わずか2日後だった。
「…あいつどんなやり方で解決したと思う?データを盗んだ奴の家族を人質にとったのさ。そして、データが手に入るとクライアントの求めに応じ、外部にもらさない為に全員殺した…。女子供も含めて一家皆殺しだよ」
「・・他の2名のSeeDは止めなかったのか?」
「止めたらしいよ〜。でも、SeeDにとってクライアントは絶対だ、そう言われたら、言い返すことが出来なかったってさ。マイオは、やり方を非難されたんだけどね…『争いなんていうのは、どっちにも正しい理由があるものだ。一方の正義に味方をして、もう一方の正義を滅ぼす。傭兵は、金で雇われクライアントの正義に力を貸す者だ。クライアントの望みをかなえる事がすべてだ。殺す相手が誰だろうが知ったことか』…って言ってさ」
「なるほど…一理あるな…」
「なに感心しているのさ!あんな奴が、SeeDだなんてとんでもないよ!クビになった時、ああ、やっぱりSeeDはまともな組織だ、と思ったさ〜。あんな奴を賞賛する組織だったらSeeDなんか目指すもんか!僕、とっくに辞めてるよ!」
…スコールはそれらの会話を鮮明に思い出した。
(そうか…あのマイオか…この男が…)
スコールは改めてマイオを見る。この三年間何をしていたのだろう。傭兵として単独で仕事を引きうけてきたのだろうか?爬虫類めいた目つきが不気味だった。すでにSeeDでないにもかかわらず、SeeDを名乗ってここにいる。

おそらく、ピメンテル社が偽のSeeDを仕立てる為に傭兵を募集し、適任だった彼が選ばれたのだろうが、
(一体、なにをする気だ…?)
スコールは、警戒せざるを得なかった。
「では、村長。しばらくの間ごやっかいになります。早速作業にとりかからせて頂きますよ」
トーマスは、椅子から立ちあがり、部屋から出ていった。三人のSeeDもそれに続いた。
「さて、どうなることやら、しばらくは見守るしかないですな…」
村長の言葉に、スコールは頷いた。

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文責:楠 尚巳