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Sファイル

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ウェポン発掘作業は、その日も、翌日も続いた。今のところ、耳障りなうるさい音が聞こえてくる以外に変化はない。ペンションも作業員の宿泊で一気に満室となり、賑やかになった。女性作業員の中には、スコールを見て騒ぐ者もいるのだが、適当にあしらっている。休暇も残り少なくなった。そして、まだ彼女もこない。だが、休暇を過ぎてもこの件が片付くまではいるつもりだった。既に、ガーデンへも報告して許可を得ている。この日、スコールは村長の家の昼食に招待されていた。ビルが、一緒に食おうと迎えに来たのだ。
「じいさまもカーラもいないんだよ。一人で食うのは味気ないし、量がありすぎるしな」
と、いうわけで、村長の家の食堂にスコールとビルはいた。
二人は、食欲を十分に満たしたあとで、一息をつく。テーブルからゆらゆら立ちのぼるお茶の湯気を、包み込むように両手で持ちながら、会話を交わす。話相手はお互いしかおらず、片方が寡黙なスコールであるからして、そんなに会話がはずむわけでもなかった。それでもビルは、気にした様子もはなく、時にぼやきながら、勝手にしゃべる。スコールとは違い、ひとりごとさえ口にしてしまうタイプらしい。
「それにしてもなぁ…あのゴウゴウとした耳障りな音、なんとかならんもんかね。こうなってしまったら、早く発掘して、さっさと帰って欲しいよ」
外から聞こえる雑音に、ビルは大げさに耳を塞ぐ仕草をする。音の正体は、氷山で発掘作業をしているであろう、機械音だ。
「…そうだな…」
いきなり、勢いよくドアが開いた。
「ああ、もう、あいつらときたら!!」
赤い顔で怒鳴り込んできたのは、カーラであった。
「なんだ?カーラ?どうして、ここに?」
「兄さん!聞いてよ!あの作業員や軍人の奴ら、ちょいと綺麗な村娘を見つけると、かたっぱしから、声かけるのよ!しつこいったら!!なんとかしてよ!!」
「なんとかして、って、いわれてもなぁ…お前の場合、平気だろ?気ぃ強いし、男なみの腕力だからなぁ。いままでここを訪れた奴らだって、みんな酷い目にあっただろ?」
「なんですってぇ、それが、かっわいい妹に言う言葉なの!…あら?ウォルター、いたの?」
カーラは、ようやくスコールの存在に気づいた。
「どうも…」
「お前もじいさまもいないからな。彼と昼飯、食ったんだよ。だけどさ、お前戻ってきていいのか?」
「ふん!かまうものですか!あんな連中に協力するなんて嫌よ!大体なんで給仕なんてしなくちゃならないの!」
無料奉仕しているわけではない。ビジネスとして、金はしっかり出してもらっているのだが、カーラにしてみれば「客なら、客らしくしろ!」と言いたい心境なのだろう。ビルは妹のそんな様子に、ため息をついた。
「あのなぁ、他の連中はどうするんだ?お前だったら、うまく牽制できるだろうけどよ、皆がお前みたいな性格してるわけじゃない。あいつらに、困っているかもしれないぞ。ほうっておくつもりか」
兄にそう言われて、たちまち後悔しはじめるカーラだった。あんまり腹が立って、つい降りてきてしまったとはいえ、あの場所には仲の良い友達がたくさん残っているのだ。ヘンなところを触られて抵抗も出来ずに餌食になっているかもしれないと思うと心配になってくる。もし、そうであるなら…もちろん張り手をくらわしてやらなければ気が済まない。

「…わかったわよ…帰るわ…なにごともなく、さっさと出ていってもらわないと困るもんね。せっかく来たから、ポットや替えの品、ついでに持っていくわ」
カーラは不満たらたらの顔で、部屋から出ていこうとする。
「ちょっと待った!カーラ。どうせ一人じゃ全部持てないだろ。なぁ、ウォルター、妹と一緒に氷山へ行く気ないか?奴らの作業風景、見たいっていってたろ?荷物持ちとして、氷山へ一緒に行けばいいさ。俺は、村の仕事があるんで行けないしな」
どうだ?と訊いてくるビルの提案に否はない。ずっと気になっていた事だ。
「決まりだな。カーラ、一緒に行け」
スコールは、食堂にビルを残し、カーラと一緒にいく。
「これと、これと、これよ。ああ、これも足りなくなってたわね」
それらをいくつかの袋にまとめた。
「ほんとは女が三人がかりで運んでるんだけど…持てる?」
スコールは、何も言わず、荷物をひょい、と肩に背負った。もう一方の空いているほうの手に他の袋を軽々と持つ。カーラは目を丸くする。
「あんた、見かけによらず力持ちなのねぇ。いかにも強そうな大男だって、こんなに腕力強くないんじゃないの」
ガンブレードよりは軽いぞ、とスコールは心の中で律儀に返答してみる。
「で、どこに運ぶんだ?」
「ああ、そうだった。こっちよ。ついてきて」
カーラは、ポットを両手で抱え、スコールは、そのあとについていった。

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文責:楠 尚巳