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月の夜話

7

翌朝、部屋から出てこようとしないリノアを、メイドが、呼びにきた。カーウェイ中佐は既に家を出た後である。
「お嬢様?」
それでもリノアは返事をしない。目覚めてはいたが返事をしたくはなかった。部屋の外からも出たくなかった。
「リノアちゃん〜!」
窓から聞こえてきた声にリノアはぴくり、反応する。ロサの声だった。
窓から除き見る。
「どうしよう。パパ、リノアの頼み聞いてくれなかった…」
昨日、別れるとき、ロサと約束したのだ。リノアが父親に頼んで、ロサの父親をロサに返してあげる、と。

迷っていると、執事が門にいるロサに近づくのが見えた。ロサに何事か言い、たちまち、ロサは走り去って行ってしまった。リノアは急いで、部屋からでると、いまさっき、ロサと話していた、執事のところへ駈けていく。
「じいや、なに言ったの!リノア見てた。ロサちゃんどうして帰っちゃったの?」
執事は畏まる。
「お嬢様、このような事になって反逆者の娘とお嬢様が付き合っている、ということが分かったら、旦那様のお立場が悪くなるのです。旦那様の敵はたくさんいますから」
「そんなのリノア知らない!関係ないもん!これからも、ロサちゃんと遊ぶもん!」
執事はため息をついた。
「お嬢様、そろそろ自覚なさって下さい。旦那様は、ただのお人ではございません。ガルバディアという国を背負っているお方なのです。そしてその娘であるお嬢様は、他の方とは違うのです。お嬢様は特別な方なのですぞ」
リノアは、むかむかした。なんでじいやがこんなことを言うのかわからなかった。リノアはロサが好きで、好きだから、遊ぶ。それでなにが悪いというのか―――それにロサはリノアよりずっと上手に花冠をつくれるし、いろんなことを教えてくれる。それなのに…
「どうして、リノアが特別なの!リノア、特別なんかじゃない!」
執事はその問いに答えなかった。

「…旦那様からのお言いつけです。今回のことが落ち着くまで、これからしばらくの間、絶対に外出させないように、と。学校には連絡しておきました。しばらくは家庭教師の先生に来てもらいましょう」
執事は礼をし、リノアがどんなに言っても執事は首を立てに振らなかった。

リノアはそれから何度も外出を試みたが、そのたびに使用人達に阻まれる。今まではこの屋敷の主である父親が許していたからこそ、自由に外出できたのだということをリノアは思い知らされた。それでもリノアは諦めなかった。毎日、毎日、外出を試みた。リノアがとうとう抜け出すことに成功した時は、ロサが最後に訪ねてきた日より、5日が過ぎていた。

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文責:楠 尚巳