「ところで、オフィーリノアは、どうしてここに?」
「あら、スコレット様がお呼びになったのでは?」
オフィーリノア、懐から手紙を差し出す。そこには確かにスコレットの署名付で《今夜、秘密の場所で》と書いてあるではないか。
「おかしいな…確かに筆跡も署名もそっくりだが…こんな手紙書いた覚えないぞ」
その時、近づいてくる足音。
「わが愛しのオフィーリノア。今宵こそ、この胸の内を打ち明けよう。ケケ…なに、既成事実つくっちまえば、こっちのもんさ、あの石頭の父親も文句は言えまい。可憐な少女。私の天使。あんな男のことなど忘れ、俺様に従うに違いない。オフィーリノアっ!」
一人の男が飛び出してくる。
「ス、スコレット…な、なぜお前が…?」
抱き合っている二人を見て、硬直する。無表情に見つめるスコレット。
「…あんたのおかげで、ようやくオフィーリノアに求愛出来た。礼をいうぞ、男爵。オフィーリノア、さぁ、戻れ。夜が明けたら、君の父上に許しを請おう」
名残を惜しむかのように抱き合い口づけを交わす二人。
興味深々に見ているギャラリー。
「ありゃ、男爵様、完全に白くなっちゃってるよ」
「裏目に出る方なんですねぇ。ま、ま、男爵様がお二人のキューピット。落ち込まなくても」
「そう、そう。王子妃様ご誕生。婚儀の日には、タダ酒が振舞われ、ご馳走、ご馳走。たらふく頂きましょう」
慰めるようにぼやき従者達、男爵の回りを飛びまわる。
「ふ、ふざけるなーーっ!きさまら下っ端と一緒にするな!今の俺様の気持ちがわかってたまるかーーっ」
男爵、叫びながら走り去る。(←この男爵が何者であるのかは、永遠の謎)
数ヶ月後、スコレット王子と、オフィーリノアの結婚式が執り行われる。夜、盛大な祝宴が開かれているさなか、いつもなら人一倍、賑やかなはずの国王が、まるで人形のように玉座へ座しているばかり。
「ね、スコレット様、国王様はどうなさったの?」
「きっと又、出ていったんだろう。気にするな。そのうち戻ってくる。それよりも…」
「あら♪」
さて、その頃。
(見ろ、レインルード、スコレットがあんなに立派になって…わが愛しの妻よ。一緒に祝おうぜ〜。出てきてくれ〜!!)
「キャーーッ!!」
生霊の行くところ、恐怖のあまり、失神するものが相次いだという…。
- FIN -
シェイクスピア四大悲劇、それも「ハムレット」が大好きで、その縁で書いてみたくなった話です。そして書いてみてわかったことは、「自分、敬語の使い方が全然わかっていなかったなんだなー」でした。失礼しました。