薄暗い大海のよどみ、アルテマウェポン戦を前にスコールは手元のカードをじっと見続けている。
熱心に見ているのは、さっき手に入れたばかりのバハムートのカードだ。
変化させれば、ラストエリクサーが100個手に入る。
アルテマウェポン、オメガウェポン、きたるべきアルティミシア戦で節約無視で贅沢に使っても、余裕が生まれるほどの量だ。
(惜しい……よりによって、なんでバハムートなんだ……)
そんなスコールの様子を眺めながら、アーヴァインがやってられるかと言わんばかりにあくびをした。
「未練がましいね〜ま、班長はキミだから好きにすればいいけど、で、どうすのさ」
「どうするって……変えるしかないだろう?ここのプレイヤーが下手くそで、なんでも力まかせに倒すタイプなんだから、頭脳戦はできない。変えない限り勝てはしないぞ……」(悪かったby楠)
そう言いながらスコールはため息をついた。
アルテマウェポンの特殊攻撃である「リヒト・ゾイレ」をくらったら倒れるしかない。おまけにクエイクといいメテオといい、グラビジャといい、いずれも強力である。
どうせ回復させるのであれば、ラストエリクサーを贅沢に使い、全員を全回復させていったほうがラクなのだ。100個もなければ出来ないことではある。
変えなければならないということは、わかっている。
わかってはいるが、それでも世界に1枚しかない貴重なレアカードを失うことにためらいがでるのだった。
「それにしてもスコールって本当にカード好きなんだね。ラグナさんのカードから作れる英雄の薬100個だって拒否したでしょ」
いつもと変わらぬ口調で感心したように言うリノアに、スコールは苦笑した。
アルティミシアを倒さない限り、彼女に未来はない。一番不安であるはずなのに、そのようなそぶりは少しもない。それがスコールの決心させた。ここでカードを惜しんでリノアがいなくなるようなことがあれば、後悔してもしきれないのだ。
直後、バハムートのカードは消滅し、たちまちラストエリクサー100個に変わった。
(……こうなった以上はできるだけ収穫をあげてやる)
スコールはガンブレードを抜きはなった。
「なるべく長引かせるぞ。エデンをドローして、アルテマをドローできるだけドローするからな」
「スリースターズも盗むかい?」
「いや……スリースターズよりアルテマストーンが欲しい」
オメガウェポン戦に備えて、能力をアップしたいことろだ。力といい精神といい、ジャンクションさせるのにアルテマに勝る魔法はない。
さらに階段を降りていった。
やがて……
大海のよどみの深くで警報が鳴り響き、アルテマウェポンが姿をあらわした。
眠りを妨げられた静かな怒りなのか、倒されるとは思ってもいない思いからくる余裕なのか。モンスターの中のモンスター、王者の貫禄十分に悠然とかまえ、3人を静かに見つめている。
その存在に圧倒されそうになる。
その時だった。
リノアがあんぐりと口を開けながら、
「おっきい〜。すごい!かっこいい!!」
と素直な感想を口にした。
魔女になったことすら速攻で受け入れてしまった娘に怖いものなし。
彼女はどんな時も、プレッシャーに押しつぶされるということがないらしい。
そんなリノアの様子に、他の二名は、麻痺しかかっていた本来の力と冷静さをとり戻すことに成功する。
「いいか。攻撃するならば特殊技、それも最強技だ。オーラストーンを使うなりして、常に特殊技がでやすい状態にするんだ。通常攻撃の奴は復活魔法や補助魔法、ラストエリクサーを使うサポートにまわってくれ。それを繰り返していれば、あいつは倒せる。焦るなよ」
「ラジャー!」
長いウェポン戦がはじまった。
- FIN -